青い月のためいき

百合とかBLとか非異性愛とかジェンダーとか社会を考えるオタク

『水星の魔女』に期待していいのだろうか~恋愛匂わせ百合アニメの20年史~

※色々な作品の致命的なネタバレを続々するので適時気をつけてください。

 

 百合オタクになってから10年強と経ちますが正直なところ機動戦士ガンダム 水星の魔女』に恋愛百合を期待していいものかどうか、未だにわかりません。
 だって今までずっとそれは期待してはいけないものだったから。


 だって、
いくら事後の雰囲気出していようが、

『NOIR』8話

いくら殺し愛をしようが、

喰霊-零-』12話

いくら世界を敵に回してでも愛する人一筋になろうが、

魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語』

いくら殺されてもいいとまっすぐ愛の告白をしようが、

響け!ユーフォニアム』11話

いくら独占欲にまみれて押し倒そうが、

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』11話

それでもその関係を恋愛とは呼んでくれたことはなかったから。思春期一過性と切り捨てられてきたから。
 恋愛かと思えばふたりは別れるかふたりが世界に別れを告げてしまっていたから……。

 だから怖いんです。
 婚約して「ずっとそばにいて」と泣いてハグしても信じられない。

機動戦士ガンダム 水星の魔女』11話

 期待してもどうせ裏切られるって思ってる。恋愛とは明言せずにいくらでも逃げ道を用意してるだろうって思ってる。女同士にどうせ恋愛としてこの世を生きる結末はないんだろうと。

 本記事ではどうして私がそう思うようになったのかの一端をお伝えできればいいな。
 (もちろん現実社会がそう思わせるに充分な状況だからではありますが、ここではその社会と相互に影響しあっている百合アニメの視点からお伝えしたいと思います)

  • 「恋愛匂わせ百合」の定義
  • なぜ匂わせに留まるのか
  • ★1990年代
  • ★2000年代
    • 百合ブームからの模索期
    • いまいち受けない? 日常系へ取って代わる
    • 整ってくる匂わせ系
    • 2000年代まとめ
  • ★2010年代
    • 日常系
    • 女の子たちが集ってなにかをやる系
    • 匂わせ系
      • 「恋愛よりも尊い特別な関係」
    • 異性愛
    • 日常系・匂わせ系・女の子たちが集ってなにかをやる系・異性愛系全部乗せ
    • 百合漫画の興隆によるアニメ化ラッシュ
    • 2010年代まとめ
  • 2020年代
  • 漫画における変化のきざし

「恋愛匂わせ百合」の定義

 「恋愛匂わせ百合」とは、「女同士の関係性がそれなりに比重を置いて描かれているけれども恋愛とは明言しない百合」のことです。
 どこまでが「それなり」かは私判断です。ファンダムに百合として受容されたかどうかも加味します。

なぜ匂わせに留まるのか

 なぜ匂わせに留まり、恋愛を描くことが困難なのでしょうか。
 恋愛百合を求め許容する視聴者層が限られていたからです。あとで見ますが特に近年のアニメは広くマスを追求しているのでマイナーな恋愛百合は相性が悪く、むしろ嫌悪する層もいるのでリスクですらあるのです。

 これここに至るまで約20年の百合アニメ史を振り返りましょう。
 基本私が視聴済み作品を挙げるので必然漏れはあると思いますが、未視聴含めてできるだけ要所は押さえたつもりです。

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『蒼穹のファフナー THE BEYOND』加害の連鎖を止めろ

※アナウンス※
この記事の筆者は冲方丁従軍慰安婦像への侮蔑発言及びその後説明なしに記事を削除して発言をなかったことにしようとした対応を批判しています。
koorusuna.hatenablog.jp


 久しぶりのファフナー記事。……と思ったら2年以上書いてなかったな。多分今回が最後のファフナー主題記事になると思います。ではさっそく。


 BEYONDの大きなテーマは「加害の連鎖を止める」です。
 それを成し遂げるために「被害を甘受するでもなく、憎しみにとらわれるでもなく、適切な怒りを持とう」というメッセージが『蒼穹のファフナー THE BEYOND』の根幹にあります。

 本記事はBEYONDの批評です。
 その上でメッセージ自体は悪くないんじゃないかと考えます。ファフナーが歩んできた道の集大成として。
 しかし制作者側に「加害の連鎖」に関する知識と考察が不足しているがために被害者を蔑ろにして変なことになっているのが問題です。

 どこにでも適用できる普遍的な脱連鎖の知などありませんが、ファフナーのどこが誤っているかくらいは指摘できるのではないか……。
 以上が本記事の試みです。

  • ●BEYONDの構造
  • ●「自己犠牲と他己犠牲の中立を取る」の誤り
    • ○他者の存在を知覚することで他者尊重を覚え、自己限定尊重を引っ込めていく
    • ○被害性と憎しみを否定される
    • ○被害者から加害者への免罪
    • ○なぜこんな問題が起こるのか
  • ●加害連鎖の止め方の不完全さ
    • ○加害者ケア
    • ○加害責任の欠如・貧しさ
  • ●ではどうすればよかったか
  • ●最後に……権力構造
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非百合オタク女性におすすめ百合漫画10選 Part2

前回記事はド定番と現代百合を刮目せよのバランスを意識したラインナップだったのでもう少し自分の趣味寄りの紹介をしたくなりました。
あと10選じゃ足りない!!!

koorusuna.hatenablog.jp

  • 百合漫画選出基準
  • 10選
    • 1.不揃いの連理(~5巻)
    • 2.Collectors(全2巻)
    • 3.SHWD(~1巻)
    • 4.百合にはさまる男は死ねばいい!?(LINEマンガ)
    • 5.将来的に死んでくれ(全7巻)
    • 6.彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる(~1巻)
    • 7.神絵師JKとOL腐女子(~3巻)
    • 8.明るい記憶喪失(全6巻)
    • 9.理想と恋(全1巻)
    • 10.私の世界を構成する塵のような何か。(全3巻)
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『つくたべ』の次に読みたい非百合オタク女性におすすめ百合漫画10選

『作りたい女と食べたい女』を読んで百合もいけるじゃんと思ったけどどの漫画に手を出していいかわからない女性を誘導しよう記事。
でも書いてから思ったけど『つくたべ』のコアコンピタンスって「女という制約からの解放」「解放を肯定する救いの手」なのかなあと思うから多少ズレるかな。
まあ近接するし紹介したいからします。
無用なストレスに悩まされない百合、読みたくないですか?

百合におけるフェミニズムの兆候についてはおそらく次の「百合と男」記事のテーマになる予感がするので数が溜まったらきっとやります。まだ数少ないけどあるにはあるよ!!
koorusuna.hatenablog.jp
koorusuna.hatenablog.jp

  • 百合漫画選出基準
  • 10選
    • 1.やがて君になる(全8巻)
    • 2.ふたりはだいたいこんなかんじ(~3巻)
    • 3.となりのロボット(全1巻)
    • 4.2DK、Gペン、目覚まし時計。(全8巻)
    • 5.夢の端々(全2巻)
    • 6.その日に残るかけらのために(全1話)
    • 7.楽園の条件(全1巻)
    • 8.彼女とカメラと彼女の季節(全5巻)
    • 9.付き合ってあげてもいいかな(~7巻)
    • 10.オクターヴ(全6巻)
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続続・NTRを考えてみる~男らしさの苦悩~

前回記事のつづきです。
koorusuna.hatenablog.jp
koorusuna.hatenablog.jp

  • NTRの背景にある社会とは(ジェンダーをとりまくあれこれ)
    • リードを取らない女と取りはじめた女とそれでも苦悩する男
      • 女は性的リードを取らないのか?
      • 女が性的リードを取りはじめた「にもかかわらず」ではなく、「だからこそ」僕を選ばない
    • 「男らしさ」に苦悩するとき
      • 女は恋愛対象/婚姻相手の男になにを求めているか?
      • なぜ今「男らしさ」が重荷なのか?
    • 自己責任論とNTR――真面目で優しい弱い男
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