青い月のためいき

百合とかBLとか非異性愛とかジェンダーとか社会を考えるオタク

ネオリベラリズムと『進撃の巨人』 -新自由主義下の自由と絶望と希望-

進撃の巨人』32巻時点の記事です。
32巻までのネタバレがあります。33巻収録分については大きなネタバレはありませんが踏まえてはいます。

koorusuna.hatenablog.jp
前回記事の続きです。
前回はももクロを分析しましたが、今回は主に『進撃の巨人』について語ります。


先の記事で『進撃の巨人』にあるのは強烈な現状肯定だと述べました。
大きな理不尽を前に個人は抵抗すべくもないからです。
受け入れるしかないのなら、せめて傍にある幸福を慰みにするしかありません。

この現状肯定はNTRにも垣間見えます。
どうせ現状を変えることなどできない、上に楯突くことも学んでいない己は使い捨てられて終わる。
そんな諦念がいっそが興奮に変わってしまうのがNTRです。興奮は残酷さを麻痺させてくれます。(NTRを考えてみる - 青い月のためいき


NTR世界は強者男性/弱者男性という二元的な男性観しか持っていません。
ネオリベラリズムは、弱肉強食という単純すぎて理解しやすい世界の理屈を作り出すことに成功しました。
勝ち組/負け組の二元論の世界で、弱者の足場はますます不安定になっていきます。

  • 新自由主義
  • 『進撃』における「自由」とは
    • 強者総取り、弱者を見捨てる不均衡なルールで運用される市場経済の自由
      • 「どれだけ世界が残酷でも関係無い」
      • 犬に食われる残酷な「自由」の正体
      • 「私達は私達の力で人権を勝ち取るしか無いの」
    • 『進撃』が個人の自由な選択を重視するのはなぜか
    • ネオリベラリズム下の「自由」な闘争には果てがない
      • エレンの虐殺
      • サシャが死んだこと
  • なぜ残酷な世界で戦えるのか
    • 『進撃』とももクロ -思想があれば戦える-
    • 絆の危うさ -絆があれば戦える、か?-
    • 「生まれただけでえらい」再帰性 -存在的安心があれば戦える-
  • 強烈なニヒリズム。絶望を踏まえた希望
  • ネオリベラリズムナショナリズム
  • おわりに
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ネオリベラリズムとももクロと有安杏果 -新自由主義下の絶望と希望-

初めに立ち位置を明らかにしておくと私は現在ただ杏果が好きな人です。
杏果がももクロを辞めること、運営・ファン・メディア等周囲がももクロから杏果を断っていく手つきを受け入れるのに二年半費やしました。
なので今さら5人の、それも2011年あたりのももクロを語ることをご容赦ください。
二年半私は冷静でいられなかった。やっと筆を執れたのが今なので。

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リヴァイにジークは殺せない

展開予想をしましょう。
こういうのは完結して結果が出てからやるのは面白くない。ということで『進撃の巨人』31巻時点の現在からお届けします。
普段展開予想なんて詮ないことはしないんですが、今回は帰納的に類推できたのでやります。はずれたら笑いましょう。

リヴァイ「俺の目的はジークを殺すことだけだ」
(『進撃の巨人』31巻/諫山創)

人類を救うために行動してきたリヴァイですが、今となってはもはや取りつかれたようにジークを殺すしか考えていません。
しかし、リヴァイはジークを殺すこと能わないでしょう。
なぜか?

進撃の巨人』は意味のある死を描かないからです。

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NTRを考えてみる

この記事を書くにあたって主に参考にしたのは同人誌『<エロマンガの読み方>がわかる本2 特集:NTR』であるが、いくつかのNTR作品を購入して読んだ。
NTR好きの男性による語りも様々あたっての所感は、一言にNTR好きといってもどこに魅力を感じるかは人それぞれである、という当たり前の結論だった。
しかしそれで終わりにしてはNTRを取り巻く男性ジェンダーの実際は一向に整理できない。
NTR好きの男性自身が当事者研究として行った成果物を読んでみたいが大した論文も見つからないため、仕方ないのでひとまず仮説として考えてみたい。
言い訳になるが以下の論はいずれも非当事者による仮説に過ぎない。
もしもこれを読んで「全然ちがう!」と怒りを覚えたとしたらぜひとも当事者の口で語ってみてほしい。

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百合と男社会の闘争記録 in 2020~いかに男を排除できるか~

百合と男・リターンズ。

koorusuna.hatenablog.jp

ありがたいことに記事をupしてから3年経っても未だにアクセスが多い百合と男の記事。
今でも概ねの主張に変わりありません。
私はそんなに数読むほうではありませんが、そんな私の観測範囲内でもこの3年で溜まってきました。
百合と男の闘争記録が。

……なんっでそんなにも、こんなにも、百合は男と戦い続けるんだ。
答えは前記事でもう書きました。
女が女とつがうことはそれ自体が社会への、そして男への反逆だからです。男に依存せざるをえなかった女たちからの。それが百合の宿命。

前回は百合ジャンルの転換点になるような作品を中心に時代の流れをざっくり見ましたが、今回はわりと単なる羅列なのでお断りを。まあ前回も羅列か。
さて私は根に持つので記事がプチバズったときちらほら謗られた「作者はそこまで考えてねえのに自分の主張のためだけに作品を利用するな」の言葉、覚えてます。
作者の意図を越えた分析を延々やってるブログを書いてきた身として5本の指に入る嫌いな言葉、「作者はそこまで考えてない」。

まず紹介するのは「百合作家が男のこと考えてねえわけねえだろバーカ!!!」。

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