青い月のためいき

百合とかBLとか非異性愛とかジェンダーとか社会を考えるオタク

ドキュメンタリーにおける演出編集と信頼の効果をひたすら考え続けた森達也『FAKE』

がしがし本編のネタバレしてるし本編を見た前提で話を進めます。


森達也の映画は『A』『A2』、著書は『A』『A2』『A3』『それでも、ドキュメンタリーは嘘をつく』既読です。
それを踏まえてこの『FAKE』がどういう思想によって描かれたのか読解。
キーになるのは「演出」と「信頼」です。
ドキュメンタリーは完全なる事実ではなく人の手が加わった創作だから、「いかにも作為的な編集」と「被写体との信頼関係づくり」が重要になることをいかに作品に盛り込むか。

以下ほぼtwitter(鍵垢)で垂れ流していたことのコピペなので散漫な文になってますがメモとして。

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『月刊少女野崎くん』元ネタをリスペクトするということ

月刊少女野崎くん』が好きだ。

ギャグがめちゃくちゃ面白いし、キャラもみんな魅力的だし、絵も見やすくて、テンポがいい。
アニメも再構成や繋ぎが抜群に上手くて、千代ちゃん役の小澤亜李さんなんか最高すぎて一気に色んなアニメで名前を見るようになった。

非の打ちどころがない『野崎くん』だけど、私が何より好きなのは何かを馬鹿にしないところ。
特に私は「ホモネタ」に敏感で同性愛蔑視表現を見るとげんなりと消耗してしまうのだが『野崎くん』の同性愛ネタはぎりぎり蔑視までいかない、「同性を好きになるなんておかしい!」みたいな発言がない。
だから無駄に疲れずに笑うことができる。


少女漫画、これも馬鹿にされやすいもののひとつである。
「最近の少女漫画wwwwwww」とか聞き飽きたうるせえ。

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『蒼穹のファフナーEXODUS』14話 一騎と総士の距離感について一考

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(『蒼穹のファフナーEXODUS』14話)

近すぎるよね??



私も一介のふじょしなのでもちろん「ん?」ってなりました。
初見はイベント先行上映時だったので大画面でこのカットが迫ってきて「ん?」ってなりました。

なんで隣に座ってるの?
……と、石井さんも喜安さんもだいぶ気になっていたもよう。
やっぱ誰がどう見ても近すぎるよね??

このカットがなぜこんなに関心をそそるのか、ふじょしだからなだけではないはずと思って考察してみます。

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『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語』読解(主にまどかとほむらの想いの両義性について)

狂ったように叛逆を見ていました。
劇場公開時一度見たきりだったんですがふと見返したくなってレンタルしたら真っ逆さまに落ちた。
ついでにTV版も見返した。劇場版も見たほうがいいらしいですね。円盤買う。

もう議論し尽くされたろうけれど自分の物語体験をまとめたいので書きますつらつらと。

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『ちはやふる』は「運命」をどう見ているか――少年漫画と少女漫画の融合

引用部分色つき太字。
ちはやふる』31巻現在のエントリです。


「運命」は物語のなかでどう描かれているか。
非情な運命に対して抗うことを良しとするか、それをも受け入れることを良しとするか。
それは物語によってそれぞれ違います。


ちはやふる』は少年漫画である、とよく言われます。
なるほど確かにいわゆる努力・友情・勝利を描き、少女漫画の主題になりやすい恋愛よりもかるた描写を優先するスポ根漫画として『ちはやふる』は位置づけられます。

軸となる物語構造も少女漫画ではあまり主流でない「未来の明確な目標へ向かう」構造を取っています。
これは少年漫画の基本構造と同種のものです。
このへんを私は上手く言い表せなかったんですが、ちょうどよく端的に言ってくれるエントリがあったので引用します。


blog.monogatarukame.net

少年漫画とは『明確な勝利条件』があり、少女漫画は『曖昧な目標』があるということではないだろうか?

千早の勝利条件は「若宮詩暢を制しかるたクイーンになること」と明確です。
ちはやふる』の構造はまさに少年漫画そのものと言えます。

しかし、「運命」の描かれ方に注目してみると、どうも王道の少年漫画と言い切れないように思えます。


少年漫画における「運命」と少女漫画における「運命」の描かれ方には違いがあります。
一般的に、少年漫画では打ち克たねばならない枷となります。
少女漫画では受け入れるべき器となります。

koorusuna.hatenablog.jp

これはそのまま、『明確な勝利条件』を設定する上で乗り越えなければならない「障害」として運命を描き非情な運命を打破してこそ勝利が獲得できる少年漫画と、勝利条件を持たないために非情な運命すべてを受け入れられる少女漫画の違いになります。
では、『ちはやふる』ではどうか。
この作品は「運命」を単なる枷にはしていません。
ちはやふる』において「運命」とはただ抵抗するものではなく、深く、複雑に描かれます。

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