青い月のためいき

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『蒼穹のファフナーTHE BEYOND』皆城総士の服装について

蒼穹のファフナーTHE BEYOND』1-3話終了時点の記事。
THE BEYOND、『蒼穹のファフナー』ドラマCD『STAND BY ME』のネタバレあり。

総士「アルヴィスの制服はどうした、一騎」
一騎「あれか……。あれ、どうしても着る気になれなくて」
総士「僕も最初はそうだった。これまでとは全く違う常識の中で生きなければならないのだから。だが、制服を身にまとうことで受け入れることの最初の一歩になる」
一騎「受け入れる、こと……」
総士「それが、生き残るためになにより必要だということを覚えておけ……一騎」
(『蒼穹のファフナー』ドラマCDVol.1『STAND BY ME』)

服装は所属を表します。
BEYONDで皆城総士は何度もお着替えしてみせてくれました。
その演出意図を読み解きます。
おそらく誰もが意識的・無意識的に読み取っている演出だと思うのですが、改めて言語化しました。
円盤出たらキャプチャ-しましょうね。(自分宛)(しました。10/25追記)



1.白パーカー/ジーンズ
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14歳の姿に成長後、お目見えしたのは真っ白な謎パーカー。
二代目皆城総士のアイコンになる服です。
パーカーもジーンズも初代総士のイメージを重ねにくい微妙なデザイン。
白というのも「新しく生まれたよ!」感があって新鮮かも。

1話ラストから2話ラジオで真壁一騎と対話するまで、ずっとこの格好です。
まず「竜宮島で平和に暮らしていた皆城総士」をこれでもかと見せます。



2.寝間着 半袖半ズボン

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(『蒼穹のファフナーTHE BEYOND』2話)
ラフなパジャマ姿の寝起き。
皆城総士が清潔な私服の寝間着を着て寝る、という姿を、思えば見たことないんですね。
アルヴィス地下の部屋でも総士はずっと制服だった。
というか、初代がほとんどアルヴィス制服だったのを埋めるかのように、二代目はOP含めて8パターンもお着換えしてます。
初代、私服4着(無印2着・ROL1着・EXO1着)と制服2着、シナスー3着プラスアルヴィスコートで計10着……? 二代目わずか3話で既に肉薄。
こんなにも無防備に平和・日常を謳歌している総士の姿を見れるのはこれが最初で最後でしょう。



3.半袖黒シャツ/丈短めジーンズ

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(『蒼穹のファフナーTHE BEYOND』2話)
ジーンズ2着持ちか? 裾上げてるだけ?
生徒会室でマリスにせっつかれつつ椅子をもてあそんでいるときの服です。
白パーカーが五分丈くらいで、ぎりオールシーズン対応っぽいデザインなのに対して、こちらは半袖。夏を強調。
これは学校に現れる真壁一騎を際立たせる目的と思われます。

セミ(とホトトギス)の鳴く声。
盆祭りの話題。
涼しげな服装。

そこに突如現れる「不審者」は、暑そうなコート。
生徒会室から見下ろした一騎を映すカメラは一瞬ぼやけます。
これが陽炎を演出し、「暑そう」を増幅させる。一騎の異物感を印象づけるのです。

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(『蒼穹のファフナーTHE BEYOND』2話)



4.マルで囲われた「竜」の字が背にプリントされている法被/の下に着ている白パーカー

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(『蒼穹のファフナーTHE BEYOND』2話)
マル竜マーク、私の記憶ちがいでなければ本物の竜宮島では使用されていませんでした。
竜宮島の所属を示すのはALVISロゴです。内部にいる者は「島」を認識すれば事足りるのでことさら竜宮島アピールする必要はないのです。
マリスの「僕たちこそ(僕たちだって)竜宮島だ」という主張を感じます。

そして、総士はそれを脱ぐ。
わかりやすいですね。
盆祭りは竜宮島構成員として馴染み、参加する。総士は竜宮島のひとりであることを「受け入れている」。
けれど外の世界の真実を求めて「真壁一騎さん」に会う彼は、いよいよこの島の所属をいともたやすく捨てることができるのです。壊されると知らないから捨てられたとも言えます。
BEYOND新生「皆城総士」アイコンの誕生です。



5.一騎から被せられたアルヴィスコート

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(『蒼穹のファフナーTHE BEYOND』2話)
厳密に言えば総士が着た服ではないですが。
EXODUSのED・BEYONDのOPでも示されたとおり、アルヴィスコートはすっかりエレメントのシンボルになりました。(EXODUS本編では溝口さんしか着てないのに)
一騎の総士を守る想い。
偽竜宮島から引き剥がし、懐に強制的に引き入れる一騎の強引さ・強い意志・庇護欲を感じさせます。
また今の時点では言いすぎかもしれませんが総士もエレメントのうちのひとりなんだぞ、という暗示にもなりえますね。



6.海神島の支給服(ナレインらも着ていた人類軍の規定服の色ちがい?=海神島の制服?)

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(『蒼穹のファフナーTHE BEYOND』3話)
この姿が現れるシーンはちょっと面白いです。
お目見えは船内でごはんを食べるシーンです。
「誰がお前たちと食事なんか」と突っぱねたときには、頭から毛布をかぶってなにを着てるか見えない。
つまり、この時点の所属がわからないようになっているんですね。
着替えたのが食事前でなくベッドに潜り込む前だったとすると、食事で懐柔される前に既に竜宮島に馴染みかけているように見えてしまい演出が噛み合いません。
食べる、支給服を着るのふたつがいっぺんに視認されることで「懐柔されてんじゃん!」感が演出できるのです。
だから総士を毛布でくるんだのではないかと。

現れるのはサイズの合っていないぶかぶかの支給服。
支給服を着た総士は一定程度、海神島のことをすんなり受け入れているのでしょう。
しかしぶかぶかでサイズは合っていない。これまでとは全く違う常識を受け入れつつあるが、身に馴染んでいるわけではない。信じきってはいない証となります。

そしてこそ、今までの自分とは全く違う常識を身に包んでいる総士が「父さんと母さんのいる島に帰してよぉ……」と泣く姿にこちらは胸を打たれてしまうのです。




あらゆるお着替えを見せてくれた総士ですが。
それでも、アルヴィス制服をOPEDですら着ていないんですよね。
『STAND BY ME』では「非日常」を象徴したアルヴィス制服。当時着用に抵抗した子どもたちもいまではすっかり争う世界に順応し、アルヴィスへの帰属意識を当然のように受け入れています。
このアルヴィス制服はBEYONDではそのまま「竜宮島の所属」を表すのでしょう。

EDでわざわざエレメントたちと初代総士に着せているのに、現総士は依然「自分」の服です。(マル竜法被を脱いで白パーカーが現れる点から見ても、この総士の服は偽竜宮島に所属していることではなく「現皆城総士」アイコンのみを表していると考えていいと思います)
支給服もシナジェティックスーツも、人類軍だって着ているものです。竜宮島固有の服──我々ファンがいちばん見慣れた服を彼は着ない。
OPを見ると竜宮島メンバーに馴染んではいるようですが、はたして「こちら側」につくことはあるのか。思い入れのない島を取り戻すという史彦の悲願を叶えてやりたいと思えるのか。自分の身体の真実を知りフェストゥムに愛着を覚えるのか。
総士帰属意識(のなさ)がそのまま服に反映されるので、今後の服装、特にアルヴィスの制服については注目したいところですね。


~OP~
7.袴
8.ボーダーのシャツ?
9.シナジェティックスーツ

お着替えが多いぞ。


○その他

フロロ
青基調のワンピース/風呂上がりのラフな格好/浴衣
フロロ・マリスは今回総士の次にお着換えが多いのでは? 3着お目見えです。
ちゃんと皆城総士の妹として「皆城乙姫」をやって、お兄ちゃん大好きな感情を学んでいます。
表情豊かなフロロを包む衣服にもまた豊かな平和の色が見えるようです。

エレメントのアルヴィスコート

EXODUS2クールめは作中で冬が訪れました。
そのEDで一騎総士甲洋操がコートを着ようと「能戸総監督の趣味だ……」で終わるだけでなんの違和感もありませんでした。
しかしBEYOND、偽竜宮島も夏のお祭りをやっており、OPで紹介される子たちもみんな涼しげな格好をしています。季節は夏ごろと推定できます。
なのにOPでは3人だけコートを着ている。
本編で一騎がコートを着ているのも北極という場所を考えると理にかなってはいるのですが、やっぱり異質性を感じずにはいられません。意図的に浮世離れさせて人間性を抑えられているのでしょう。


というか一騎・総士・甲洋・真矢・剣司らの大人制服……(目頭が熱い)

EDで大人制服総士を持ってきたのは一瞬しか総士に大人制服を着せられなかった能戸隆の未練によるものではないかとにらんでるんですが、これほどまでに「子ども」が「大人」になったことを雄弁に語るものもないと思います。