青い月のためいき

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『蒼穹のファフナーEXODUS』14話 一騎と総士の距離感について一考

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(『蒼穹のファフナーEXODUS』14話)

近すぎるよね??



私も一介のふじょしなのでもちろん「ん?」ってなりました。
初見はイベント先行上映時だったので大画面でこのカットが迫ってきて「ん?」ってなりました。

なんで隣に座ってるの?
……と、石井さんも喜安さんもだいぶ気になっていたもよう。
やっぱ誰がどう見ても近すぎるよね??

このカットがなぜこんなに関心をそそるのか、ふじょしだからなだけではないはずと思って考察してみます。




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まず第一に、シートは他にも空いてるのに隣に座っていること。

画面に映るのは一騎と総士、真矢に溝口さん、そしてオルガさん。ちらほら空席が目立ちます。
オルガさんがいること、空席があることで、視聴者に「わざわざ隣に座っている」という印象を与えます。

そしてこの画面になるパンニング以前の画面がこれ。

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視線のいきやすい画面中央やや上が思いっきり空席です。
そして次に目立つのが一人で座るオルガさん。広登と暉もゆったり一列を独占しています。
広登のくつろぎ方も加え、強烈に「空席いっぱいあるんだし通常一人で座ったほうがいい」という印象が先行されます。

そのあとにくるのが、あれです。

第二に、このパンニング処理。

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右画面から左画面になるまで3秒かかっています。
カメラが左水平に動くと、視聴者は画面左側に何かがあると期待して追っていくものです。

視線を追って、徐々に姿を現す一騎と総士……と思ったら……。再現してみます。

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 ↓

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!!?

期待が膨らんだ先にあるのがこの光景。演出的に驚きが増す効果が発揮されているのです。

第三に、溝口さんと真矢の距離感。

とはいえ溝口さんと真矢も隣同士です。
しかしこの二人の距離感が一層「通常の距離感」の基準として機能してしまうのです。

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腕を組む溝口さんに、膝をくっつけそこに両手をのせる真矢。
二人とも腕が自身の内側に畳まれ、相手に配慮する形で距離を保っているように見えます。
後ろのシートも見え、体格差も手伝ってきちんとパーソナルスペースが維持されています。

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配慮? なにそれ???

パーソナルスペース0距離。
近すぎるよね??(三回目)

第四、近すぎる。

それにしてもぴったりくっつきすぎです。
細部をじっくり見てみましょう。

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腕の線に注目。綺麗に同じ弧を描いている……というかほぼ平行です。
意識して互いの腕とくっつきあわせていなければこうはなりません。

さらなるポイントはこの黒い隙間の部分。
わかりますかね。一騎の腰と腕のちっちゃい隙間です。

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座ると通常、制服の上着腰部と腰の肌とに少し間ができるはずです。
加えて、制服腕部ももちろん本来の肉体の腕より幅が大きくなっているはずで、つまり腕はもっと細いです。

なのに奥の隙間が見えるほど腕が浮いているのです。

皺ができているあたりに肘があると見ると、やってみるとわかりますが結構つらい。
つまり、自然に腕を下ろしたらそういう格好になったというよりは、意図して腕を沿わせているように見えるのです。
そのため腕を意識しているような緊張感が生まれています。


さて。
13話の輸送機内、広登と暉も隣に座っていて、腕がぴったりくっついています。
けれど誰も「近すぎる」とは思わなかったはずです。

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(『蒼穹のファフナーEXODUS』13話)

このときの状況は14話とは違います。
暉が島の外の状況に疲弊し、広登がそれを慰めている場面です。
輸送中ではなく、絶望する暉の心に広登がそっと寄り添う必要があります。ここでひとつ席を空けてしまえば慰められません。
そして今まで見てきた一騎と総士のような"意識してくっついている緊張感"がここではすべて取り除かれています。
腕の線を見ても別々の曲線になっています。

一騎と総士の場合、綺麗に腕が平行であり寄り添う事情の特にない状況で隣り合っているのがこことの相違点です。

第五に、腕の演技。

何気にここが一番重要だと思っています。

13話を見てたとき、そうだよなあ広登と暉のときは別になんとも思わなかったんだよなあ、何が違うんだろう……と考えてました。
そしたら上述した理由が挙がってきました。
そして再度ここ。

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互いにくっついているのとは反対側の腕に注目です。

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ぴったりくっつけられた腕の"意識してる"緊張感のことは触れました。

その片側の腕の緊張感と比べ、もう片腕は非常にリラックスしているのです。
この落差が違和感になります。


別に単にこの格好をするだけならなんの無理も生じません。肘掛けに腕をかけたいこともあるでしょう。
しかし、片腕に緊張感が漂っているにもかかわらずもう片方がリラックスしているとなると一気に不自然さが増すのです。(一騎は肘掛けなど寄りかかるものがないのでひときわ不自然です)

ということは、こういうことです。

「片腕は自然に投げ出される」「もう片方は指先まで整え緊張している」「腕が互いにかなり意図的にぴたりとくっつくように寄せ合っている」
→くっついているほうの腕にだけ意識が集中している

それでいて顔はあんな平常心なので、総合するとわざわざ隣に座ってわざわざ腕を寄せあう意識を傾けることが自然な関係性である、と読み解くことができるのです。
結論:知ってた。


そんなわけでこのカットがこんなに興味を引くのには、それなりに巧妙にしてある程度必然かつ計算にしてある程度偶発的な理由があるのでした。

※ちなみに問いは「あのシーンの一騎と総士がやたら関心をそそるのはなぜか」なので実際の距離や遠近感の話は不問にします。



……衝動的に書いてしまった。
こういうくっだんない考察大好き。
便宜上「不自然」とか「違和感」とか言ったけどふたりにはあの距離感が通常で適切であると考えてもなんの不都合も不整合もないよね。