青い月のためいき

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【新居昭乃歌詞分析2016】コラム:新居昭乃は矛盾語句の組み合わせを好む&新居昭乃は空へと落ちる

 太陽は冷たく笑った
(『ユノハノモリ』より)

 冷たい火が灯る
(『蒼玉節』より)


 熱いはずのものが冷たい、明るいはずのものが暗い。昭乃さんはそんな世界 観を好んでいるようです。
 他にも、『Beluga』『Flower』『スプートニク』『エウロパの氷』『さかさ まの虹』『黒い種』『白昼夢』『Pool』『Wings of Blue』『飛び地』『深海 の火』『一切へ』等々でも、炎が冷たかったり、雪が暖かかったり、水の中に太陽があったり、昭乃さんはたびたび矛盾した表現を多用します。

 昭乃さんの描く「夏」はどことなく寒々しいです。

 なぜ誰も消せなかったの この腕通り抜けた夏の日を
(『Solitude』より)

 いくら昭乃さんが本来前を向いていると言っても全体的にはやはり暗くこ もった印象を受けます。
 こうして前向きなはずのものがよくマイナスワードで 打ち消されるのもその一因ではないかと思われます。


 素足にやわらかい砂が崩れて空に落ちた
(『月のかけら』より)

 誰のために(ヴァルハラへ)落ちてしまう 深い空へ
(『The Tree of Life』より)

 昭乃さんは時折足の下に空があると捉えることがあるようです。それも特に近年に顕著に。他にも『Little Wing』『Monday,Tuesday』『Ekleipsis』『一 切へ』等があります。昭乃ワールドで空は上から見守ってくれることが多いですが、これらの空はどうも「足元の覚束なさ」「浮遊感のある底知れないささ やかな怯え」を表現しているように見えます。
 昭乃さんの「空」の使用例をカテゴリ分けしてみる解体も面白そうです。