青い月のためいき

少女漫画とかアニメとかセクシャリティとかの考察・分析。

『蒼穹のファフナーEXODUS』一騎心理過程メモ

読解。
久々にファフナーを無印から通しで一気見してやっぱ面白えな~と感慨に浸ってた。あと大画面EXO9-10話会やってテンション爆上がりした。ファフナー面白いなあ。

EXODUSの一騎、絵のみでの象徴的抽象的な心理描写が多かったり端的な台詞でまとめてたりで本当にこの人を理解できるのかできているのかわからなくなる。
解釈しておかなければ忘れてしまう。とりあえず現時点での読解と推測を見通しとしておきます。



一騎「あと3年……それだけあれば覚悟もできる」
(1話)

一騎「カノン!お疲れ様」
カノン「なんでここに来た!?」
一騎「なんとなく、こいつが見たくて……」
カノン「乗る気なのか?」
一騎「違うよ」
(2話)

1話では余命3年と告げられくすぶり、2話では戦闘が始まってマークザインを見に行く。
6話で「ずっとこいつに呼ばれてる気がしてた、ここにいる理由を教えてくれって」と明かされるこの行動。
「今、ここにいる理由…」とはEXODUSのキャッチコピーですが、基本的にこのとおり今ここにいる理由を確立しつづけるのがEXODUSのキャラクターたち。

総士「伸びたな。切ったらどうだ?」
一騎「これも俺の一部で、生きてるって思うと切る気がしないんだ」
(3話)

髪を伸ばすのは生への執着。
自分がいる理由を探すために一騎はマークザインに乗りつづけていたと。ザインに乗れない状態では自分がいる理由を探せないため、もはや「自分がいなくなる」のと同義。
無印第一期では「戦うことに慣れるのが怖い、自分がいなくなる気がして」と吐露していたのに、すっかり戦いが一騎の居場所となっている。
真矢ちゃんと確執が生じるわけだ。

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(4話)

ファフナーでは土=珪素フェストゥム。存在理由を求めた戦いに染まっている一騎。
楽園で食べ物(命)と向き合い家で土(敵)と向き合う。
史彦が歪まない器をつくれるようになったのは傷つけられた過去を受容したからだけど、まだ歪んだままということはみんなが敵に奪われた過去に未練があるからか。
8話-9話で見た夢は「みんなが生きてる平和な夢」で、幼少期の終わりを表しているらしい。腕が再生したあとは歪まなくなったのかな。

とまれここからたびたび「世界をどう祝福するか」と手を見つめることになる。最後の生き方模索中。

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「生きたい」
(5話)

ひっそり溜めこんでいる感情。自分がいなくなることへの恐怖。
余命あとわずかなのになにもできない、島外派遣にも行けない、新パイロットたちは優秀でザインが出撃しなきゃいけなくなる危機もない、救済願望を解放できない。戦えなくて存在さえもあやふやに。
存在理由を預けたザインとの癒着があり、今ここにいることを選びつづける一騎だから、生きること=戦うことになっている。(総士のそばにいると決めた時点で)

一騎「美羽ちゃんを守ればいいのか?」
織姫「美羽だけじゃだめ。美羽が願うものすべて、守りなさい」
(6話)

最後の生き方が定まる。
「生きたい」は自分のために存在を求める利己意識。
「生きる」は美羽を守りに行くという最後の生き方を決めたこと。
と同時に島へ帰ってくる決意でもあったと思ってます。(出発前史彦に宣言した「死ぬ気はないよ」、短冊表の「島が平和でありますように」、旅最後の島への執念を見るに)


こうして「美羽の願うものすべてを守る」=「ここにいる理由を得て最後の生き方を全うしようとする」のが10話までの一騎。

一騎「遠見たちが探しにきたものが、なくなるかもって言われた。守るよ、みんなを。それが多分、まだ俺の命がここにある理由だから」
一騎「これが俺の……祝福だ!」
(9話)

そして救済意識を解放させ英雄になる。
みんなを守るためならばフェストゥムを倒すことを厭わない。
しかしたとえば総士が2話でマークニヒトについて「クロッシング拒否。皆に干渉させない。それが今、僕がいる理由だ」と言ったように、「今、ここにいる理由」はつねに変化していくものとなる。
いつだってつねに「今」があり、「今ここにある」命が未来をつくるから。いつか必ずいなくなるからこそ今ここにいることを選択する意味がある。

「生きる意味 役割を 受け入れた時こそが 幾度幾度となく 訪れるスタート」という『その時、蒼穹へ』の歌詞はまさに何度も何度も「ここにいる理由」を更新し選択しつづけていくことになるキャラクターたちの生き様を的確に捉えてて今さら言うまでもないんですがすげーなーって思う。

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一騎「俺も出る!」
総士「だめだ。力を温存しろ」
一騎「人が襲われてるんだぞ!?」
総士「ここにいる人々を守るためだ」
一騎「──っ」(手を見る)
(12話)

10話のシュリーナガル到着以降、旅の過程で世界の惨状を目の当たりにすると、「美羽の願うものすべてを守る」ことの難しさ、自分ができることの限界を思い知る。

一騎「島にいるときも食べ物に感謝してたけど、今は言葉にできないくらいありがたい」
(14話)

一騎「沢山、敵の命を奪ってきた。返せるものは返すよ」
(18話)

そのなかで一騎は敵と傷つけあうこと、命を奪い奪われることを考えはじめる。
「君は知るだろう。奪われた命と分け与えられた命の違いを」と言ったのは総士ですが、料理をすることと敵と戦うことで両方について考えてきた、さらに旅のなかで思考を深めていったんじゃないかと。最後の生き方模索中②。

9話で暉に「敵を食った」と言われ、自身も「まだ機体に食われたりしない」と表現する一騎は総士や織姫、芹ちゃんと同様命を奪う罪について真剣に向き合っていたんじゃないかな。

総士「なにをしてるんだ?」
一騎「髪を切ろうと思って」
総士「切る気がしないんじゃなかったのか」
一騎「自分だけ命を守ってる場合じゃない」
(18話)

フェストゥムが人のために命を与えてくれる現象を知り、敵の命を奪う罪を犯しておきながらいなくなることへの恐怖がまだある自分に疑問を抱く一騎。
「自分は自分のために生き物や敵の命を奪う、しかし相手はこちらのために命を分けてくれることがある」事象への迷い。
「自分のため」というエゴを超克しようとして散髪。


ここの散髪が好きで……「いなくなりたいと言って自分を蔑ろにして誰かを救いたがるくせに誰よりも自分の存在理由のために戦いに執着する一騎のエゴ」という重要テーマに対するこの英断。
いつ切るか怯えながら放送待ってたのにエゴからの脱却をこれだけの象徴に留めおく……
さらっと重大なことやったよね!? 視聴者への信頼感すごくね!? しかも3話浜辺以来のいちゃいちゃシーンとして……! っていう。

一騎「戦うだけじゃ希望になれないって思い知った。ただ命を使うだけじゃ、どこにも辿り着けない」
総士「同感だ。僕らには新たな平和をつくる術がない。世界を導く者たちを、対話の力を守ろう! 犠牲になったすべての人々のためにも!」
一騎「そのために俺は……ここにいる!」
(21話)

世界の惨状を見たことに加え、ここ個人的に譲れないところなんだけど真矢ちゃんが自分の意思で人を殺したのがショックでかいと思う。
自分の力では戦いは終わらないし世界を救えないと痛感し最後の生き方を考え直す。
それが「自分ではすべてを守ることができないから未来の希望たる対話の力に焦点を絞って守ろう」という軌道修正につながっていく。

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(22話)

一騎の右腕と桔梗についてはこちらで書きました。
元々は「総士を傷つけたこと」「総士を傷つけることができてしまう自分」からはじまる一騎の罪悪感は、「きれいなフェストゥムを倒せる自分への嫌悪感」にもつながったのでかつて苦悩を募らせた。
10話でザインの右腕が散り(即再生するものの)、15話で散りこそしなかったもののニーベルングの指輪から真っ先に右腕から同化されるのは、一騎の消せない右への想いが読み取れる気がしてならず。

敵の命を奪うことへの思いが右手への罪悪感を呼び起こすというのは読み取りすぎかな。
「世界をどう祝福するか」で撮したのは右手だけじゃなかったことからも、右手=罪悪感=敵の命を奪うこと、と安直につなぐ意図は感じられないわけで。


でも散ったのは事実。
ついに同化されて散るという"罰"が科される。どんなに互いを許しあっても根底の罪悪感は消せないことの表面化。
と同時に「自分のために戦うエゴ」の象徴が消滅した瞬間でもあると思う。

つまり右腕が消滅した第一の意味は、総士を傷つけた罪に与えられた罰。無印22話で動かせなくなった右半身のリフレイン、消せない罪悪感の表面化という側面。
第二に、いなくなりたくなくて自分のために戦うエゴに挑戦してやっと打ち勝ったこと。打ち勝ったというか受け入れたというか。散髪により超克を試みたエゴの結末として消滅した側面があるのではと。

で、21話で腕がもげ、22話で人間としては命を終える。

一騎「俺には平和はつくれない。でも、敵と対話できる人たちがいる。彼らを守るために、俺の命を使いたい」
(『THE FOLLOWER2』)

「自分たちではみんなを守れないからせめて未来の対話の力を守ろう」になる。
マークザインの存在、総士とのツインドックによる万能感が底を尽き、新たな選択をする。

一騎「自分なんかいなくなればいいと思ってファフナーに乗った。なのに……自分がいる理由を探して、ずっと乗りつづけた。選ぶよ。まだ俺にも命の使い道があるなら、それを知るために生きたい」
(24話)

そして生まれ変わる。永遠の命ではない。

自分のために戦い存在したいエゴをまだ抱えていた序盤。
自分ではなく未知の希望のために戦うことを少しずつ選択"していった"EXODUS。
この帰結として、今までのエゴを否定し利他を選んだのが一騎の生まれ変わりの肝だと思う。



というのが一連の一騎解釈です。
生まれ変わったら総士の傷も一騎の右腕も癒されてしまうのは「傷つけた過去を受容する」表れであると。

前回のファフナー記事から1年以上経ってた。
一騎と真矢ちゃんの話書きたいけどBEYOND見るまでぜったい書けない……。
BEYOND劇場版かTVシリーズかをはやく教えてくれ。夏か。夏なのか。