青い月のためいき

少女漫画とかアニメとかセクシャリティとかの考察・分析。

水城せとな『失恋ショコラティエ』7巻考察

失恋ショコラティエ』7巻ネタバレありきの記事です。
引用部分色つき。



★チョコの演出
水城さん、あとがきで「人間はもぎたての果実のままでいるのが一番」と申し立てた。

「プリミティブな姿が一番ステキ」だと。
今回ついにヤっちゃった爽太とサエコさん。そこで(概念的に)チョコの画が出てくる。

限りなくいとおしい-『失恋ショコラティエ』7巻p53

失恋ショコラティエ』7巻p53

爽太の想いの結晶であるチョコの固体。これは何年も考えすぎてきた爽太の凝り固まった感情である。
それが、数ページ後流体に変化し融けていく。

凝り固まってた恋心が剥がれて、ただの情欲となって、恥も外聞もなくプリミティブな姿へ回帰していく。

限りなくいとおしい-『失恋ショコラティエ』7巻p59
失恋ショコラティエ』7巻p59

そういう絵。
(超個人的に私は殊更に性欲=本能と解釈したくないけど)
さらには不倫関係になってしまった恋愛のドロドロを視覚的に演出する効果もある。
↑は「救いようもないほど汚れた?」ってモノローグと重なる二人の次のページに配置されてるから、その流れで汚れたチョコのようにも思える。


サエコさんの駆け引き
サエコさん何考えてるかわからないけど、とりあえず私の憶測。

これも彼女の「ゲーム」なのだと思う。物理的な居場所と、愛されてる実感を確保するための。
吉岡さんがショコラヴィに押しかけ爽太と対峙した。
「吉岡さんが来たよ」と爽太が発言したところから、サエコさんのゲームが始まる。
夫の元へは絶対帰りたくない、でも他に行く所がない。爽太は自分を好いてくれてるけど、夫と会ったことで罪悪感が沸いてきたかもしれない、もうここへは置いてくれないかもしれない、これ以上罪を犯してまで愛してくれてないかもしれない。
サエコさんは恋愛に生きてきすぎて、愛されないと自分の存在価値がわからない人なんじゃないかな。
で、咄嗟に出た言葉が「巻き込んでごめんね」。爽太くんは共犯者じゃないよってほのめかす。すると見事に食いついてくれるわけだ。
色々言われても、爽太を動揺させるため、全て冷たく突き放す。さっき笑顔で「ただいまー」とかすっかり我が家顔で来店してきたくせに。
で、「帰らないで」という爽太の言葉を引き出すために「明日帰るよ」と言う。
もーう爽太は満点で応えてくれるのだ。
「もう少しここにいてよ」「好きだ」

そこで↓この顔ですよ!!

限りなくいとおしい-『失恋ショコラティエ』7巻p153
失恋ショコラティエ』7巻p153

絶対してやったり。今の私の憶測は全てこの顔を根拠にしてる。
この居場所を手放さないようにするための、愛を注がれるための駆け引きに勝ったサエコさん。
二重に勝ってるとこがすげえ。



★「悪い男」考
以前「他の女にインスパイアされて出来たチョコをサエコさんの口へ運ぶ」ことがオリヴィエに「悪い男」と評された。
だけどサエコさんは爽太を好きではないから誰に影響受けようと関係ないよね。
ショック受けるどころか「悪い男ね」と意地悪く笑うような立ち位置ですらない。
言わば空回りなお遊戯。わかっていながら遊んでた。
だけど今回。
えれなの好きなキスのシチュエーションを、サエコさんに流用しちゃう爽太。
これは確実に「悪い男」だ。
ただしそれはサエコさんに対しての悪さではないのね。
仮にサエコさんが爽太を好きだとしても、まあそういうこともあるよね、ですんなり受容してくれそう。
だって「元恋人から教えてもらった店に現恋人を連れてく」とかって誰でもやってることだもの。
じゃあ何が悪い男かというと、それがえれなを確実に傷つけるから。
もうただのセフレじゃなかったのにな。
「あの頃 どんな気持ちでいたっけ」ってえれなにとってかなり痛々しいセリフ。


★小ネタ
・天然装って薫子さんの痛いとこ突いていくサエコさんと、それに薄々感づきつつサエコさんのおかげでひねくれた価値観が崩壊して洗脳されていく薫子さんにすごく百合を感じる。この二人好き。
サエコさんの「「本気で好き」ってどういうことですか?」のあとに爽太にそれを体現させる妙。美しくも醜くもない恋愛感情の解体。これぞ水城せとな
サエコさんは薫子さんの恋愛指導に、爽太は新商品考案中に、「わくわくしてきた!!」
恋愛とは生活の一部であり、真剣になれば何でも尊くて、殊に恋愛だけを神聖化する必要はないのだとここでもさりげなく主張。

そんな感じで超面白かったです7巻。