青い月のためいき

百合とかBLとか非異性愛とかジェンダーとか社会を考えるオタク

【新居昭乃歌詞分析2016】母性への強い関心について-『そらの庭』に見る母性性と現在への跳躍-

 昭乃さんは母性の体現者です。この命題におそらく異論はないでしょう。昭乃さんの歌う言葉にはそれが如実に表れています。
 例えば空はしばしば見守り包み込んでくれる母性となって出現しますし、『昼の月』『月の家』の流れにも、恋する少女が相手を守りたいと思うようになるという、典型的な少女から母性への成長を窺うことができます。

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【新居昭乃歌詞分析2016】歌詞の変遷-人とのつながりへの切望とその救済-

 去る2014年、ファンクラブイベントにて、この機会にとばかりに新居昭乃歌詞分析を発表しました。発表の場を与えてくれた企画者の方、ありがとうございました。
 ひたすら語句をデータ集計する方法で、そこで発見したことも多かったです。が、心残りもありました。本人名義で出している曲しか範疇にしなかったこと、個々の単語の抽出だったので文脈では正確に捉えられない部分もかなりあったこと、それと、時系列にかかわらずいっしょくたに分析したために時代ごとの変遷を見ていくことができなかったこと。しかし集計だけで力尽きてしまったので次回以降にと断念しました。

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「百合=恋愛のみ」じゃないって何度言ったらわかるんだ

※『リズと青い鳥』『兄の嫁と暮らしています。』のネタバレがあります

リズと青い鳥』を見たでしょうか。
あの映画では羨望憧憬好意嫉妬羞恥尊大尊敬哀切依存刷り込み見下し独占欲自意識焦燥陶酔幸福寂寥絶望希望鮮烈支配傲慢信頼安心純心拘泥包容愛、その他様々な女と女の感情が取り交わされています。
これをあなたは「百合」と呼ぶでしょうか。
それとも「百合ではない、もっと別のなにかである」と言いますか。


私は百合と呼びます、ていうか『リズ』でさえ百合ではないと言うなんて思いもつかなかった。

タイトルで煽ってみましたが私の言いたいことはそれだけです。
百合は恋愛感情のみではなく女と女の間に発生するプリミティブな感情すべてを包含する寛容かつ広大なジャンルであること。

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女は処女かママである。──女の子が殺されること

映画版『溺れるナイフ』と『5つ数えれば君の夢』のネタバレがあります。


女といえば処女かママ(か時々老婆)しかいない。
「女」カテゴリーの幅はとても狭い。生まれた瞬間から人間や他の動物ではなく処女という生命体と見なされる。
処女期が終わった瞬間から、間はなしにママになる。
本記事で扱う「処女」とは男社会に吸収される前の、自分が自分のまま生きていく、自他がとけあい他者が自分であると信じていられる存在を意味する。
「ママ」は自分の人生を捨て他人の人生の周縁になる存在を意味する。
単にセックスしたことがない女性、子を持つ女性という意味ではない(本記事ではそういうことにする)。

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『ひそねとまそたん』女にとって男との恋愛は重要か?

※本エントリは『ひそねとまそたん』の重大なネタバレがあります。


女にとって男との恋愛は人生における最重要事項である。
という命題は普遍的に真でしょうか。

本当にそれだけが女の人生か?
はたまた異性愛を捨ててでも仕事に生きるべきか?
男に選ばれた女は勝ち組か?
男を選ばなかった女はさびしく干からびていくしかないのか?

ひそねとまそたん Blu-ray BOX 接触篇 (特装版)

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